海老蔵が睨む “阪急 Men’s トーキョー”

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本日、東京・有楽町マリオンの旧「有楽町阪急」が「阪急メンズ・トーキョー」として新装開店しました。
報道によると、開店前に行列もできるなど、なかなか好調なスタートを切ったようで、東京暮らしが長いものの、阪急沿線生まれの阪急沿線育ちの私としては「阪急」が東京で頑張ってくれるのはやはり嬉しいものがあります。

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 「阪急メンズ」 開業 銀座・有楽町の商戦激化
  日本経済新聞 2011 /10/10 12:24

阪急阪神百貨店は15日午前、紳士専門店「阪急メンズ・トウキョー」を開業した。東京の銀座・有楽町地区では初の男性に特化した店舗で、付近のビジネスマンや富裕層の需要取り込みを狙う。一部の店舗を除き、月曜から土曜日の開店時間を従来の百貨店に比べて遅めの正午に設定、閉店時間は午後9時にする。平日の仕事帰りの買い物のしやすさに配慮した。日曜・祝日は午前11時~午後8時。
開店までに約600人が列をつくった。1番目に並んだ東京都江東区の男性会社員(36)は「限定のブランドバッグを目当てに来た。何日かかけてじっくり見て回りたい」と話した。夫のバッグを買いに茨城県から訪れた中村利恵さん(35)は「高級感があって見やすい店内で好感が持てた」という。阪急メンズは百貨店の「有楽町阪急」が7月に一時休業し、全面改装する形で開業した。紳士服やバッグ、小物類を充実させたほか、全身をコーディネートするサービスや、カップルで利用できるネイルサロンなどもある。同店近くでは28日にはファッションビルの「ルミネ」もオープンするため、有楽町駅周辺の買い物環境が大きく変わることになる。


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イメージキャラクターには謹慎から復帰したばかりの市川海老蔵を起用。今だに「清く正しく美しく」のタカラヅカ精神をモットーする阪急グループとしては異例のキャスティングです。関西と違って「阪急ブランド」が通じない銀座での新装開店では、多少のダーティイメージには目をつむり、とにかく話題性によるマーケティングを優先する戦略に出たようです。「今度の店はコケられない」という阪急の本気度が伝わってきます。

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メインエントランスは、以前「有楽町西武」が営業し、今度「ルミネ」がオープンする有楽町マリオン東棟との間の屋内通路です。通路を通り抜けるだけでもたくさんの海老蔵にガンを飛ばされますw。

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銀座ソニービル前からみた有楽町マリオン。
双子ビルの奥が阪急メンズトーキョーが入る西棟(建物所有者は阪急と同じ資本系列の東宝)。手前の高い方が「ルミネ」の入る、以前「有楽町西武」が入っていた東棟(朝日新聞社の所有)。

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かつては「Hankyu」と「SEIBU」のロゴが競うように並んでいたマリオンの正面も今はこんな感じ。「ルミネ」はJR東系列の商業施設。阪急メンズより2週間ほと遅れて今月28日オープン予定。

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ところで「阪急百貨店」は、なぜか外側に目立つエントランスを作らないのが特徴です。大阪梅田本店は、日本初のターミナルデパートとして誕生し、その後東急電鉄などのお手本となったのですが、阪急梅田駅を降りてそのまま巨大なターミナル施設内の歩行導線にしたがって歩かされ、外の風景を見ないまま豪華な「内玄関」から入店する構造になっています。現在全面建て替え中で、部分オープンしている新しい梅田本店でもその「阪急スタイル」をかたくなに引き継いでいますし、他の支店でも似たようなイメージの造りが多いです。

冒頭3枚の海老蔵が睨むメンズトーキョーのメインエントランスですが、やはり「有楽町阪急」時代から、梅田本店のミニチュア版のような「内部建築」構造となっています。もちろん「有楽町マリオン」は阪急の自社ビルではありませんが、「阪急」の入る西棟は、グループ企業である「東宝」の所有物件であり、設計段階からある程度阪急側の意図が反映されていたんじゃないかと想像しています。

で、それがどうしたんだ?と言われそうですが、華やかな外観とエントランスを持つ商業ビルがキラ星のごとくひしめく銀座界隈では、こういう阪急のようなスタイルの店舗がひとつくらいあってもいいかなと思うんですが、大阪梅田では「阪急」の存在感があまりにも大きいため、「阪急的内部建築思想」が梅田の街並みから「地上の賑わい」を奪ってしまっています。

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写真は梅田にワープ。阪急梅田本店の外回り。場所はこのあたり→ストリートビュー

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大阪を南北に貫くメインストリート「御堂筋」の北のドンつきに面しているという立地にもかかわらず、買い物客用の出入り口が一切無く、商品搬入口があるだけという徹底ぶりです。こういう設計のデパートはおそらく世界でもここだけなのではないでしょうか?ちなみに写真の道の下には巨大な地下街ネットワークが広がり、銀座も顔負けの人通りで溢れかえっています。

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地上に面したエントランスはこのようにとっても小さく、数も少なく目立たない。(ちなみにこれは歩道橋の上)

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今は内部コンコースが工事中のため、阪急本店の西側と東側の行き来のためにここを迂回する歩行者がそこそこいますが、工事完成後ほとんど往来もなくなりそうです。

銀座を始め、東京の繁華街と違って地上の賑わい、ストリート性が決定的にかけるのが梅田の街のウィークポイントです。梅田、、大阪さらには関西全体の「人を惹きつける魅力」を増すためには、阪急グループを中心に、行政と連携して大胆に街づくりの思想を転換する必要があるんじゃないかと、関西に帰るたびに思います。

話が西に500km逸れましたw。(大阪の「街並み」については、そのうち別ブログ作って色々考えてみようかなと思ってたんですが、やっぱり同一ブログ内で守備範囲を広げた方が気力を分散しなくて長続きするかな?)

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有楽町にもどります。その「阪急独特の地味な外部エントランス」の設計ですが、東京店に限ってのメリットを探してみると、あまりにも華やかすぎる銀座の街中で、敢えてあまり派手に人を招き入れようと構えない、メタリックなオブジェのような佇まいが街並みに落ち着きを与えています。

さらにいうと、街を歩いていて、海老蔵に睨まれなくてすむというメリットも挙げられます。

ところが、電車に乗って帰ろうとJR有楽町駅側にまわると・・・

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あ、こっちにいてはりました。海老蔵先生w。山手線や東海道線の通勤客、そして新幹線で上京する人たちは、しばらくこの「睨み」で出迎えられることになりそうです。

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