雷門真正面で建設進む新「浅草文化観光センター」のパース(引用元:台東区HP)。設計は隈研吾氏。木造チックな和のテイストをモチーフにした現代建築が街中に増えることは大賛成なんですが、パースを見る限りちょっとこれは実験的すぎるかも・・・。周囲の街並みに対して敢えて自己主張しない「負ける建築」を提唱する隈研吾氏の作品にしては、絵を見る限り、かなり「勝っている建築」のような気がします。
「高すぎる」「浅草の街並みから浮いている」「雷門側に威圧感を与える」・・・等々、賛否両論の景観論争が巻き起こっているようで、浅草寺側も露骨に不快感を示してるようですが、施主の台東区は淡々と工事を進めています。パースと見比べてみると、どうやら鉄骨(木の梁ではありません。当たり前かw)はすでに最高部まで組みあがっているようです。
ブルーシートに覆われた現状では、普通の中層ビルに見え、雷門通りや仲見世通りに続く大通りの道幅が十分に広く、またすぐ後ろに十数回建てのマンションも複数建っているため、高さ的には思ったほど突出した印象はなく威圧感も感じません。
宝蔵門(仁王門)付近から。この距離からだと、仲見世脇に並ぶ雑居ビルと同じような高さのラインにすっぽりと収まっていて、特に突出感はありません。また、ブルーシートがとれて個性的な外観が姿を現しても、もともと仲見世商店街自体がキッチュでゴチャゴチャした景観(失礼!)なので、あまり浮いた感じはしないような気がします。
通りを雷門の南側に渡って吾妻橋方面(東方向)を臨む。こうしてみると、隈先生渾身の力作がスカイツリーと並び立つ構図は、浅草の、いや東京の新しい定番の絵として定着する・・・かもしれません。
ただ、このパースのアングル(ビューポイントは車道の真ん中ですが・・)からみると、並びの商店街がほとんど低層なため、かなりアンバランス感があることは否めませんね。パースはどうしても当該の建物が強調されるのと、上下の遠近感が反映されてないことが多いので、実際より目立ってしまう面も大きいと思いますが。(引用元:台東区HP)
観光センター西向かいの一角を雷門側から臨む。いっそここも再開発して、新観光センターと全く同じデザインのビルを建て、「浅草ゲートタワー」にしたら、一棟だけそびえているよりも浮いた感じがなくなり、景観的にバランスがとれると思うんですが、どうでしょう?現代の風神・雷神みたいな感じで。
いや、まじめな話、やっぱり周囲の街並みがこういうなんの変哲も面白みもない雑居ビル街なのに、そこに1本だけニョッキリと極めて冒険的なデザインの建物がそそり立つから視覚的なアンバランス感を感じるんだと思います。
いっそこの際、周辺の雑居ビルも随時、隈研吾風に建て直していき、雷門通りを日本随一の和モダンストリートにしてしまえば、浅草はますます外国人観光客に人気がでると思うんですがね。(ところで中央右側の白いペンシルビル屋上でずいぶん目立っていた「焼肉」の看板がいつのまにか撤去され、景観的にはかなりスッキリした印象があるのですが、また別の看板が取り付けられるのでしょうか?)
雷門の真下。一枚目のパースと同じアングルから。なんか、パースと同じビューポイントがなかなか見つからないなあ、と思ったら、交番の屋根に乗る「振り込め詐欺防止」のど派手な看板のせいでした。
もともとこの交番は、雷門前周辺の景観に配慮して屋根の形や色を周囲の商店街と統一してあるはずなのに、これでは台なしです。歴史的建造物前の景観もへったくれもあったものではありません。
もちろん、浅草寺にお参りする高齢者が振り込め詐欺に引っかからないように注意を喚起することはとても重要なことだと思いますよ。しかしねえ・・この位置にこんな目立つ看板を設置して、定番の風景を見に来た外国人観光客の視野の何割かを占拠して雷門前の景観を毀損してしまうデメリットと、ここにこの看板があることで振り込め詐欺の被害をどの程度減少させる効果があるのか、ということを比較衡量した場合、どちらが優先されるべきでしょうか?浅草寺や地元の方はどうお考えなのか伺ってみたいものです。
最後に今回の「浅草文化観光センター」デザインコンペで優秀作品に選ばれながら最後に隈作品に敗れた5作品のうちから、ひとつ。(引用元:台東区HP)
個人的にはこの作品が一番落ち着いていて、形状的にも安定感があって好きですね(他の4作品が隈作品に負けず劣らず奇抜な作品ぞろいだというのもありますけど)。
どこか気概のあるデベロッパーが観光文化センターの並びに、このデザインを採用したビルを建ててくれたらいいと思うんだけどなあ。
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歴史的建造物前の景観もへったくれもあったものではありません。