皇居和田倉濠に面した旧パレスホテル建て替え工事。ほぼ外観がイメージできる段階になっています。低層の旧パレスホテルを高層化すると聞いたときは、さすがの私も「こんな、皇居のお堀の内側に入り込んだようにみえる立地で高層化していいのか!?」と驚いたものですが、全景が見えてくると、ファザードの形状に変化をもたせつつ品も感じるデザインで、いい出来栄えのように思います。となりの一段低い焦げ茶のビルは旧AIGビルですが、このビルも日本生命が買収し、周囲を囲むビルと同じくらいの高さに建て替えられるため、解体工事が始まっています。AIGビルは、ル・コルビジェ風(?)のモダン建築黎明期の雰囲気を感じる建築で、丸の内の景観の時間的な重層性を醸しだす上で貴重な存在だっただけに残念です。
内堀通りから見た“パレスサイドエリア”。大通りの正面に仁王立ちするパレスビルはなかなかの迫力です。敷地面積の割に高さ規制が厳しいため、のっぺりしたデブビルになる危険性もあったのですが、北側のオフィス棟とホテル棟を別の建物のようにし、ホテル棟の正面を湾曲させたデザインは、「巨大な壁」感を低減することに成功していると思います。ちなみに2年前はこんな様子でした。
皇居側に入り桔梗門前から見た“パレスサイドエリア”。曲線を用いたデザインは下手すると奇を衒った感じになり、丸の内界隈の景観から浮くリスクもあったと思いますが、そういうこともなさそうです。
左手の四角いビルがオフィス棟。全く別の建物のようにみえますが、つながっているようです。床面積の広い高層ビルを建てる時は、こういうデザイン上の工夫があるとないとで、圧迫感が全然違ってきます。
皇居正門前から見た大手町全景。視界の中央にどっしり構える新パレスホテルは外国人観光客から最も目につきやすいビューポイントにおいても相当な存在感を放っています。皇居前の景観論争で一律に高さ規制をする考え方に疑問を感じる私ですが、この場所はさすがに低層のホテルのままの方がよいと感じていました。都心の景観にとって重要な要素は機械的な高さの統一ではなく、街の歴史を感じさせる重層的なスカイラインだと思うからです。しかし今回はデザインの力でなんとか景観の多様性を保てています。設計者の苦労が忍ばれます。
ただ、右隣のAIGビルも、パレスホテルと同じ高さになってしまうと、皇居に面した最前列に巨大なひと塊のシルエットが出現してしまいます。パレスサイドエリアを100mに統一するのはいいですが、今度は皇居から離れるにつれだんだん高くするとか、ビルの高さ適度にバラけさせる景観設計が必要だと思います。パレスサイドビルの後ろでは、読売新聞東京本社建替え計画や大手町ファイナンシャルセンター跡再開発「東京プライムステージ」など、200mのビルの建設計画が進行中ですが、この位置からみてどういう具合でアタマを覗かせてくれるでしょうか?
ところでこ、この記事の写真はお盆明け平日の午前8時すぎの様子ですが、早くも観光客の団体らしき姿が・・・。欧米人の姿はまだまだまばらでしたが、アジア人観光客のツアーはかなり戻ってきたようです。この日は中国語よりもタイ語が多く聞かれました。そういえば皇居以外でもこの夏、都内ではタイからの観光客が相対的に目立つような気がします。(個人的にタイを訪れた経験が多く目と耳につきやすいだけかもしれませんが)。
中央の覆いが掛かったビルが200mの新ビルの建設に向けて解体が進む大手町ファイナンシャルセンタービル。ガスっていて見えづらいですが、その右側にスカイツリーが顔を覗かせています。
皇居前から丸の内のビルの合間に見える東京スカイツリー。さすがに距離があるので空気が澄んだ日に意識して探さないと気がつかないかもしれませんが、それなりに東京を代表する光景になる可能性はあります。しかし・・・「東京プライムステージ」のパースをみると、現大手町ファイナンシャルセンタービルの右側にずれた位置に建つレイアウトのようで、スカイツリーは覆い隠されてしまう可能性大です。もしそうなると皇居前からスカイツリーが見えるのはこの1~2年限定ということになります。なんかもったいないなあ。もっと空気が澄んできたら見えるうちにもう一回写真を撮っとかなきゃ。